2017年 中途・正社員(販売職)入社
中川政七商店に入社した当時、店長になるなんて想像もしていませんでした。前職で雑貨店の店長をしていたんですが、店長としてお店を管理していくよりも、売り場に立って、お客様のことや商品のことをお話しすることに専念したい。100%お客様だけに向き合いたいなと思っていたタイミングだったんです。
だからアルバイトで応募をしたんですが、面接時に「正社員として入社して欲しい」とお声がけいただいて。責任ある立場でということで少し悩みましたが、やはり有り難い申し出であることは間違いありません。「よし、やってみよう」と、心を決めました。
それから、仕事先を選ぶ上で、販売する商品に自信が持てるかどうかも、大事な基準でした。販売の仕事はお客様と直接お話をする中で、新たなご提案をすることもあります。だから、扱っている商品一つひとつに自分の熱みたいなものが込められないと、務まらないなと思っていて。そういう意味では、つくり手の思いが詰まった魅力的な商品ばかりを扱う中川政七商店ならば、間違いないと思いました。
スタッフとして店頭に立った時に感じたのは、やはり接客は楽しいということ。思い返してみれば、接客以外の仕事をしたことがないくらいですが、接客が好きな気持ちは、立場や時間が変化しても変わることがありませんでした。
一方で、店長としての仕事は戸惑いの連続でした。店長としての最初の赴任地は福岡だったんですが、福岡という土地で住むことも初めてだし、過去に店長業務の経験があるといってももちろん、全然勝手は違います。でも、他店舗の店長さんたちが、気にかけてくださって。何かあればご飯がてらお話を聞いてくださったり、わからないことがあればその都度、確認対応にお付き合いくださったり。本当に皆さんに助けてもらいました。
そういった交流を通じて、たくさんの方の良い部分を学ばせていただけたことも、有り難かったです。例えばある店長さんは、自身でつくり手さんを開拓してイベント企画を立てて販売をされるような、本当にスーパーマンのような存在で、店長という仕事の幅の広さを見せていただきました。また、スタッフに任せることと店長として自身がするべき仕事を明確にされている店長さんもいらっしゃって、その方からは、どんな風に仕事を棲み分けて、よい形で店舗を運営していくのかを学ばせていただきました。
ただし、中川政七商店の店長という仕事は簡単ではなくて、今も試行錯誤しています。個性が違う一人ひとりがどうやって同じ気持ちでお客様に向き合っていけるのかを、考えまとめていくこと。せっかくだったら、少しずつでもみんなが成長できる場所にしたいから。そのためには何ができるかなと、考え続けています。
店長になっても変わらないといえばやはり、接客が好きだということでしょうか。例えば、福岡から異動した後も、旅行や出張で来たのよと言っては、お店に立ち寄ってくださるお客様がいるんです。お店を訪ねてくださる度に、お土産を持ってきてくださって。気にかけてくださることが本当に嬉しく、幸せな仕事だなぁとしみじみ思います。
同じように、スタッフのみんなの、お客様との幸せな関係を目にする度に、これまた幸せな気持ちになるんです。現在の店舗は、場所柄、海外のお客様も多いんですが、「また来たわよ」といって訪ねてくださる、欧米のお客様・アジアのお客様がいます。その様子を見ると、とても誇らしい。
自分に置き換えてみれば、同じ国・同じ都市に何度も旅行するだけでもなかなかないことですし、さらに、旅先の外国で、訪ねるお店と店員さんがいるって、すごいことですよね。
店舗作りに答えはないですが、お客様から笑顔で、「ありがとう、また来るね」という言葉をいただけるような接客を、みんなで実践ができたらいいなという気持ちはぶれることがありません。そして、この気持ちを大切にしていけばいいのかなとも思っています。
それから、あまりオープンに話していることではないのですが、実は夢があるんです。それは、将来、自分でお店を持つこと。自分で扱う商品を決めて、訪ねてくださったお客様お一人おひとりと、この商品がどんな思いで作られているのか、なぜお店で扱おうと思ったのかなど、直接様々なお話しをする。そんなお店がつくれたらいいなと思います。
色々なつくり手さんについて知ることや、お金の管理をはじめ、中川政七商店での仕事は、夢につながることばかりです。でもついつい目の前の仕事に熱中してしまって、具体的な計画とまではいかないのも、悩ましいところです。でも、夢を持ちながら、すべての仕事が夢につながる勉強だと思いながら店頭に立つことも、悪くないんじゃないかなって思うんです。