2019年 準社員・アルバイト入社
40歳、最後の挑戦だと思って、面接を受けました。決して若くはないですし、子供が3人いて、フルタイムで働けるわけでもない。応募はしたけれど、まさか採用されるとは思っていなかった。これが本音です。
以前に服飾雑貨の販売の仕事をしていて、店長を務めたこともありました。ただ、商品の種類も数もかなりシンプルで、中川政七商店で求められる商品知識は格段に多く、同じ販売職とは言えないほど。その大変さは、入社後の今、さらに実感しています。
でも、もし縁があってここで働くことになれば、思い切り頑張ろうと決めていました。年上だからって、わかったふりはしない。わからないことは自分でも勉強するけど、恥ずかしがらずに何でも聞いて、教えてもらう。でも、笑顔で丁寧な接客をすることは、これまでの経験を活かしてできることだから、それもしっかりと。そんな気持ちで、働き始めました。
とはいえ最初はやはり、お客様に積極的なお声がけはできませんでした。長く中川政七商店のファンでいてくださる方も多く、私なんかよりも断然、商品のことに詳しいので、ご質問に答えられないかもしれないと思うと、気が引けてしまって。
でも少しずつ、嬉しい経験も出てきました。プレゼントを探しに来たというお客様とお話しする中で、初めはアームカバーをとお考えだったけれど、最終的に、私がおすすめした蚊帳織りのポーチを選んでくださった方がいました。「季節を限定されるものではなくて、ずっと使えるものを」という気持ちでおすすめしたのですが、「ポーチの方がいいわね。あなたに相談してよかった」と言ってくださった時は、とても嬉しかった。こういう、お客様に寄り添って、喜んでもらえる接客を、少しずつですが積み重ねていけたらなと思います。
中川政七商店の接客は「接心好感(せっしんこうかん)」といって、お客様の心に接し、お客様との間に好感が生まれることを目指すものなんですが、これが難しくて。まだまだですね。私の場合は、共感しすぎてしまうことが課題です。
例えば、とても良い素材で手間もかかっている商品だからこそ、お値段も張るということはあるんです。でもお客様が「ちょっと高いかなぁ」っておっしゃった時に、そのお気持ちを受け止めた上で、値段が高いだけの理由を是非お伝えしたい。ですが、「そうなんですよねぇ」と、ただ寄り添う気持ちだけが強く出てしまうところがあって。お客様に寄り添いながらも、お客様が気づかれていないこともお話しすることができるのか。まだまだ勉強中です。
一人前にはほど遠いけれど、この売り場に立てることがとても楽しいと思える毎日です。というのも、以前に2パターンの職場を経験しているんです。扱っている商品に愛着はそこまでないけれど、一緒に働くメンバーとは協力し合えて良い雰囲気の職場。それから、扱っている商品に愛着があって大好きだけど、働いているメンバーは、仕事を楽しめていなくて、なんていうかギスギスした雰囲気の職場。
仕事だし、我慢しないといけない部分もあるはず。どちらかといえば、一緒に働くメンバーが大事かなぁなんて思っていたけれど、中川政七商店は、商品とメンバー、両方を叶えてくれる職場でした。
商品はどれも素敵です。特に私は大きなすり鉢を気に入っていて、子供と一緒にとろろを作るなど、自宅でも大活躍。そんな風に、プライベートでも大事にしたい商品を扱えることは、大きな喜びです。
仲間という点でいえば、褒めて伸ばしてくれる職場です。わからないことはわかるまで付き合ってくださるし、ささいなことでも見ていてくれて、「よかったよ!」「前より上手になってる!」など、言葉にして伝えてくれる。いい接客がしたいということは大前提ですが、みんなが見ていてくれるから、自分ももっと商品の知識をつけたいと、家で勉強してしまうのかなとも思います。
それからチームプレイが素晴らしい職場でもあるんです。例えば、商品を綺麗に整えている最中にお客様からお声がけいただいて、その場を離れなければいけない時。他のメンバーがその様子を見ていてくれて、さっと商品を整えてくれる。そういったサポートを受ける度に、自然と私もみんなの助けになれればと思うんです。自分が嬉しかったことを相手にもしたい。これはお客様だけでなく、一緒に働くメンバーに対しても同じ。
ある時、お客様から「あなた、この店で働けて楽しいでしょう」って声をかけられたことがあるんですが、本当にその通りですね。自信を持っておすすめできる商品と、思いやれる仲間と一緒に、ずっとここで働いていけたらいいなと思っています。